気になる世界の育児休業事情とは?日本の育休制度と比べてみよう
女性は妊娠したら退職するというのが一般的でしたが、近年は産後も働き続けることを希望するママも増えており育休取得率も少しずつ向上しています。ところで、海外には日本のような育休制度は存在するのでしょうか。今回は日本の育休制度の概要と海外の育休事情をご紹介します。
日本の育児休業制度の概要と給付金
産休と育児休業の違いとは
産休は労働基準法で規定された制度で、出産にともなう身体的負担からママの体を守ることを目的としています。正式名称は「産前産後休業」で、取得できるのはママだけです。
育休は育児・介護休業法で規定された制度で1歳未満の子どもを養育することを目的としています。正式名称は「育児休業」で、一定の条件を満たしていればパパでもママでも利用できる制度です。
ママの育休は産休が終わってから始まりますが、パパは子どもが生まれた日から育休を取得できます。取得期間は最長で子どもが2歳になるまでです。
条件を満たすと育児休業給付金が支給される
【支給条件】
・雇用保険に加入している
・育休取得前の2年間で11日以上働いた月が12カ月以上ある
・雇用期間に定めがある場合、1年以上継続して雇用されている
・雇用期間に定めがある場合、子どもが1歳6カ月までのあいだに労働契約解除の予定がない
・育休中に会社から給与の80%以上を支給されていない
・支給期間中、1カ月に就労している日数が10日以下または80時間以下である
以上に条件を満たしている場合、育休開始日から180日目までは賃金の67%、181日目から育休終了までは賃金の50%が支給されます。
制度は整っているのにパパの取得率が低い
一方、パパの取得率は6.16%とかなり低く、政府が掲げた「2017年までに取得率10%」という目標にはおよんでいません。これは、パパの育休取得に対して会社が後ろ向きであることが大きな要因だと考えられています。
育休を取得すると出世競争で不利になる、給与などの査定に響くといった不安がパパの育休取得に足止めをかけている状態です。
また、育休復帰から2日目に転勤を命じられるなど「パタハラ」のような扱いを受けたパパもいます。パパが育休を取るのはまだ難しい社会といえそうです。
育児休業制度が充実している国の政策とは
パパの育休が義務付けられているノルウェー
ノルウェーではパパママ合わせて最大54週間(およそ1年)の育休が取得できるのですが、このうち1/4以上をパパが取得しなくてはなりません。これがノルウェー独自の「クオータ制度」です。
また、ノルウェーでは「半年間半休を取る」「木曜と金曜だけ休む」など、育休を分散して取ることができます。育休期間中もキャリアが途絶えないため、仕事復帰がしやすく休みを取りやすいといえるでしょう。
育休後は元のポジションに戻れることが保障されていることもあり、現在、ノルウェーのパパの育休取得率は90%以上だといわれています。
出産後も働くママの割合が高いフランス
このことを重く見たフランス政府は仕事と育児を両立しやすい社会を実現する政策を数多く打ち出しました。
現在は子どもが3歳になるまでパパかママのどちらかが育休を取得できます。期間中の収入が保証されているだけではなく、育休後は育休前と同じ地位が保障されるなど職場復帰がしやすいようです。
統計によると子育て世代にあたる25~49歳女性の就業率は80.7%、2016年の出生率は1.93となっており、出産後も働くママの割合が高いということがわかります。
パパの育休取得率が上昇しているドイツ
しかし、2005年から家族政策が共働きを前提に子育て世帯を支援する方向に転換され、パパが育休を取りやすい環境の整備が進んでいます。
3年までの育休を得る権利がパパとママの両方に認められているほか、育休中は休業前賃金の67%が「両親手当」として最大14カ月支給される制度が2007年から導入されました。
さらに、育休を取りながら時短勤務できるため育休後の職場復帰もスムーズです。このような背景から、2007年以前は3%程度だったパパの育休取得率が2009年には23.6%までに上昇しています。
問題を抱える国や捉え方が違う国も
育休は取れても保育園事情が厳しいイギリス
育休中に受け取ることができる収入は会社によって異なるため、手厚い保証を受けられる方が育休を取得するのが一般的で、パパが育休を取ってママが働くということも少なくありません。
しかし、イギリスは保育園事情が厳しく育休後にパパもママもフルタイムで働くというのは難しいようです。3歳以下の子どもを預けられる保育園は空きがないうえ保育料がかなり高額になっています。
イギリスのパパやママは時短勤務とベビーシッターを組み合わせるなどの方法でやりくりしているようです。