へその緒は母子の繋がりの歴史。親子の絆を大切してきた日本人の思い
赤ちゃんのへその緒が取れると、母子の繋がりの証として大切に保管することが多いですね。ママも自分のへその緒が実家にあったり自分で持っていたりするかもしれません。今回はへその緒の大切な役割やへその緒を切ることへの様々な見解、日本でへその緒を大切にする慣習にはどんな言い伝えがあるのかなどを紹介します。
目次
赤ちゃんとママをつなぐ「へその緒」の役割
赤ちゃんに栄養や血液、酸素を供給
へその緒は臍帯(さいたい)とも呼ばれ、中に胎盤からの栄養を運ぶ臍帯静脈1本と、赤ちゃんが排出した二酸化炭素などの老廃物を流すための臍帯動脈2本が通っています。通常の動脈・静脈に流れる血液とは反対で臍帯静脈には動脈血が、臍帯動脈には静脈血が流れています。
臍帯の中にある3本の血管は、血管が傷つきにくいとされるらせん状です。またこの血管はワルトンゼリーというぬるぬるした物質で覆われていて、これにより血管同士が絡まって血流が止まるのを防いでいます。
へその緒は赤ちゃんの命を守り育むために欠かせないものなのですね。
臍帯血は再生医療で期待されている
ですから出生時には臍帯血を検査することで、赤ちゃんの健康状態などを調べます。また、臍帯血にたくさんある幹細胞は心臓や腎臓、皮膚などの細胞になることができるため、現在では臍帯血を利用した病気の治療も進んでいます。
さらに臍帯血は、まだ臨床実験段階の再生医療への応用も期待されています。へその緒は命を育むだけでなく将来、より多くの病気を治療できる可能性があるかもしれないのですね。
健康への祈りや母親への感謝を示すもの
平安時代に貴族の赤ちゃんが産まれた日から奇数日ごとにするお祝いのうち、7日目だけが残りお七夜となったといわれています。お七夜のころには昔からへその緒を親子の絆を結ぶものとして保管する風習がありました。時代は違っても、子どもの健康を祈る心は同じなのですね。
現代のお七夜は退院祝いを兼ねて、身内で行う場合が多いようですが、ぜひ昔からの風習に習って、半紙に毛筆で子どもの名前や生年月日を描いて床の間や部屋の正面などに飾り、21日が過ぎたら外して、へその緒と一緒に大切に保管してくださいね。
「へその緒を切る」に関するさまざまな見解
命綱となるへその緒をわざわざ切らない
これによると、哺乳類の出産ではへその緒を切断せずに自然に脱落させます。もちろん蘇生などですぐに切る必要があるケースもありますが、人間のお産でも急いで切る必要はないというのです。
産後へその緒を切らないと、個人差はありますが2時間くらいへその緒が拍動している場合があるそうです。そして赤ちゃんが上手に呼吸できるようになると、自然とへその緒の拍動が終わるともいわれています。ですから、赤ちゃんの命綱であるへその緒の機能が停止してから切った方がよいのではないかと考えられているのです。
ちなみに欧米では、赤ちゃんと胎盤を繋げたまま自然にへその緒が取れるのを待つ「ロータスバース」という出産法もあります。
切るタイミングで鉄分欠乏症の心配が減少
また出産後10秒以内に切ったグループよりも、3分後にへその緒を切ったグループの男の子の方が、運動能力が優れているという結果も出たのです。これは男の子は女の子よりも出生時に鉄分不足が多いことが関係していると考えられています。
とはいえ、へその緒をすぐに切らないと黄疸のリスクが少し上昇するともいわれているため、黄疸が出やすい日本の赤ちゃんはゆっくりへその緒を切るメリットだけでなく、デメリットについても医師や助産師とよく相談した方がよいですね。
へその形は切り方で決まる?
答えはNOです。赤ちゃんのおへその形はお腹の筋肉などが関係していて、へその緒の切り方とは関係ありません。
へその緒が取れた後、おへそ周りの筋肉が弱いうちは、少し出っ張ったおへそになる赤ちゃんも多いものです。ママはこのまま形が変わらないのではと心配になるかもしれませんが、安心してください。だいたいの赤ちゃんは自然に引っ込んでいきますよ。もし1歳くらいになっても形が変わらない場合は、小児科で相談してみましょう。